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9月入試のメリット・デメリット

こんにちは!

トライプラス千葉みなと校の本田です。

先日、千葉県でも緊急事態宣言が解除され、やっと一安心というところです。ただ、緊急事態宣言が解除されただけで、自粛しなくてよくなったわけではないので、引き続き感染対策が必要ですね!

6月から小中学校も再開されます。元の日常に戻るのは当分先になるかと思いますが、今の自分に出来る勉強を精一杯やっていきましょう!

今回は9月入学について書こうと思います。

9月入学とは

今年は新型コロナウイルスの影響で、3月~5月が休校になり、学校での授業がストップしています。小中学生には、学校から自宅で行う課題が出されていますが、学校の授業が行われていないことは事実です。また、学校がない、ということは、授業だけでなく体育祭や修学旅行などの行事、身体測定やスポーツテストなどの健康・成長記録、部活などの課外活動も、中止・延期されています。

そのような授業の遅れや学校行事の未実施を解決するため、考慮されているのが9月入学です。皆さんご存知の通り、現在の日本は4月入学。4月から始まる1年間のことを「年度」と呼びますね。現在は年度の始まりが4月ですが、これを9月にしよう、という案です。

入学の時期

巷の噂では、4月の休校が長引く頃から話題になっていたと思います。何人かの都道府県知事が9月入学の必要性について言及し、政府からも「有効な選択肢の一つ」とされています。

今回の記事では、現状を整理しながら、これまで報道されていることをまとめ、9月入学のメリット・デメリットについて書きます。

学校の現状

3月~5月の授業がストップ

各学校の休校は3月から行われています。そのため、3ヶ月分の授業が実施されておらず、本来学習するはずだった勉強内容をまだ学習していない、ということになります。

3月は元々、どの学校でも授業数が多くなく、期末テストや卒業式などの行事があるため、休校にしても大きな影響がなかったかもしれません。しかし、4月、5月の授業が行われなかったことは、非常に大きな問題です。学習内容を3月までに学び終われないからです。

当年度で学習し切れない

実際、この4月、5月の空白を埋めるのは、簡単にできることではありません。夏休みの短縮も計画されていますが、それでも足りないでしょう。そこで、5月15日、文科省は「最終学年の小6、中3、高3以外では学習内容の一部を次年度以降に繰り越すことを特例で認める」と表明しました。

しかし、最終学年にあたっては、学習内容を修了できなかった場合の救済措置がありません。まして中学・高校の最終学年には、高校入試、大学入試が控えています。

そのための対策として文科省は、来年度の高校入試について、出題範囲を工夫するなどの配慮を求める通知を、全国の教育委員会に出しました。

しかし大学入試については通知が出されていません。大学入試は高校入試と違って、浪人生もいるため、その判断が難しいのだと思います。

教育の不平等

学校が休校になっているかどうか、現在は地域差があります。千葉県は緊急事態宣言が出されている期間が長かったため、学校の休校も長期間になっています。感染者が少ない地域では学校再開が早く、休校が続く地域との差が生じてしまい、教育の機会の不平等となっています。

また、休校期間中は、週ごとの課題配布、課題提出、動画配信なども行われていますが、これも学校ごとの取り組みの差が非常に大きいです。前学年の復習がメインの課題、新学年の予習がメインの課題、学力上昇に繋がるものとそうでないもの、などなど、内容も大きく異なっています。

部活動の中止

甲子園に代表される全国大会や高校総体(インターハイ)、コンクールの中止が決まっています。休校期間中の部活がないのは当然のことですが、8月に実施されるインターハイも中止です。それに伴って、6月、7月に実施される地区予選、県大会なども中止になっています。

インターハイ、コンクール等が中止

これまで情熱を注いできた部活において、大会やコンクールなど、実力を発表する最後の場がなくなってしまいました。部活に青春を懸けていた生徒の心情は、察するに余りあります。

また、部活の成績をもって、大学の推薦入試や総合型選抜(AO入試)での合格を狙っていた生徒にとっては、今後の進学を左右する重大な状況に陥っています。

学校行事の中止

文化祭、体育祭や音楽祭、芸術鑑賞会などの学校行事や、校外学習や修学旅行の中止が懸念されます。4月、5月に予定されていたものについては、すでに中止になってしまったかと思いますが、学校再開後の行事も、3密(密閉、密集、密接)の回避のため、実施が困難なものが多くあります。例えば、千葉県の高校では、修学旅行で関西・中国地方へ行くことが多いですが、「修学旅行列車」という東海道新幹線で行くことが通例です。学年全員の新幹線移動など、3密の典型例と言えるでしょう。部活、文化祭、修学旅行といった青春の1ページとなるものが実施できないかもしれません。

修学旅行の中止の可能性

9月入学のメリット

9月入学には、大きく分けて4つのメリットがあります。

①休校の遅れの解消 

②学校行事の実施が可能 

③欧米諸国との時期の一致 

④受験期のトラブル回避 

これらを詳しく見てみましょう。

メリット① 休校の遅れの解消

皆さんご存知の通り、3月~5月が休校となり、学校の授業がストップしています。6月から再開されますが、分散登校のため毎日の授業は3時間程度となっており、元のカリキュラムからは大きく遅れてしまっています。

それを解消できるのが9月入学です。

今年度を2021年の3月までではなく、8月まで伸ばします。約半年間、期間を伸ばせるので、3月~5月の休校の遅れも解消できるでしょう。受験の日程も後ろ倒しにして、2021年の7月頃に実施すれば、最終学年のカリキュラムも終わらせることができると思います。

また、休校の遅れの解消だけではなく、教育機会の不平等もやや抑えられるでしょう。現状として、学校が再開できるか、オンライン授業が展開できているか、といった教育機会の不平等が起こっています。今年度の期間を伸ばせば多くの時間が生まれるので、現状の教育機会の不平等による影響を少なくさせることができるでしょう。

ただ、これにはひとつ注意が必要です。それは、この夏・秋・冬でコロナウイルスが必ず終息するとは限らない、ということです。9月に伸ばしたからといって、遅れを必ず解消できる保証はありません。

メリット② 学校行事の実施が可能

メリット①にも関連することですが、年度の期間を伸ばした分、学校行事を実施することが可能です。例えば、毎年5月に修学旅行に行く予定だった場合、2020年はもう中止になってしまったと思いますが、2021年の5月に行くように再計画が可能です。文化祭や体育祭などの学校行事、部活の大会やコンクールなども可能だと思います。もちろん、再計画の日程調整は困難なものになると思いますが、年度の期間が変わる以上仕方がないことだと思います。9月入学になった場合、甲子園やインターハイなどの大会をいつ開催するか、調整が必要ですね。

メリット③ 欧米諸国との時期の一致 

年度の始まりが4月なのは、G8の中では日本だけで、他の欧米諸国や中国、韓国などは9月入学です。ドイツなどは9月と一ヶ月違いの8月入学です。

そのため、他国に留学する場合、学年の区切りが一致せず、約半年間のタイムラグが発生します。それが、海外留学の機会を阻害している、という意見があります。

例えば、高校卒業後に海外の大学に進学する場合、高校3年の3月に日本の高校を卒業した後、4月~8月の半年間は日本で過ごし、9月から海外の大学に入学することになります。どの学校にも所属しないこの半年間を無駄だと感じる人も多く、海外留学を阻害する一因にもなっています。

欧米との入学時期の一致

もし、日本も9月入学になれば、半年間の余計なタイムラグがなくなり、海外の学校にスムーズに入学することができます。

グローバル化が進んでいる現在、海外留学は国際的活動の大きな手段です。9月入学を導入することで、より国際化が進められます。

メリット④ 受験期のトラブル回避 

現在の大学入試は1月に共通テスト(旧 センター試験)、2月のひと月をかけて一般入試が行われます。千葉県の高校入試も、2月の下旬に予定されていますね。

この冬の時期は、気象と病気の点から、トラブルが多い時期です。

まず天気について。1月、2月は雪が降る時期であり、普段雪の多くない関東地方で雪が降った場合、電車の遅延などのトラブルがよく起こります。記憶に新しいのは2014年2月8日、9日。2月8日午後から降り続いた雪により、9日は首都圏の地上を運行する鉄道がすべて麻痺。試験時間の繰り下げや日程の変更などが行われました。

もうひとつは病気について。空気が乾燥した冬は、風邪、インフルエンザの流行の季節でもあります。受験生の多くはインフルエンザ予防接種を行うと思いますが、インフルエンザの流行そのものがないに越したことはありません。

受験期のトラブル回避

もし9月入学になれば、6月・7月が受験シーズンになることでしょう。雪やインフルエンザといった季節のトラブルを回避することができそうです。

ここまで9月入学のメリットについてまとめました。

9月入学のデメリット

9月入学には、大きく分けて5つのデメリットがあります。

9月入学のデメリット

①未就学児の学年にしわ寄せ

②教員、保育所、学童保育の不足

③家庭の費用負担の増加

④教育現場への負担

⑤社会構造の変革の必要性

これらを詳しく見てみましょう。

デメリット① 未就学児の学年にしわ寄せ

9月入学を2021年9月から実施するとなると、今年度が半年延長されることになります。すでに入学・進級した学年は変更できませんから、従来2021年4月に小学校に入学する予定だった学年から、9月入学に変更されることになります。

そうすると、その学年の人数は1.5倍に増えます。

現在、年長世代の2014年4月~2015年3月生まれの子供たちが来年小学校に上がりますが、9月入学となった場合、現在は年中世代の2015年4月~8月生まれの子供たちも同じ学年となります。

その学年はこの先ずっと、1.5倍の人数なのです。

高校入試も、大学入試も、就職試験も、クラスのテスト順位も、部活のレギュラー争いも、全て従来の1.5倍の倍率となります。

また、その学年の期間が半年延びるということは、約1.5歳差の子供が同じ学年に在籍することになります。(2014年4月生まれの子供と、2015年8月生まれの子供が同じ学年となる。)

小学校入学の7歳の子供にとって、1.5歳は非常に大きな差です。心身ともに、児童ごとの成長度合いが大きく異なり、同学年として扱うのが難しくなるでしょう。

そして、現在の年中世代は、8月以前に生まれた子供は上の学年、9月以降に生まれた子供はそのままの学年となり、従来の学年が分断されます。今年度同じ教室で過ごしてきた幼稚園のお友達が、来年度から1学年上の上級生になることもあるのです。

また、今年度の4月に新学年が始まった年中世代、年少世代は、半年分の幼稚園教育が受けられなくなります。

このように、9月入学は現在の小中高生の児童・生徒にメリットがある一方、未就学児の学年へのしわ寄せがとても大きなものとなってしまいます。

未就学児の保護者からは、「現役世代の思い出づくりのために、未就学児を調整弁にするな」という意見も出ています。

デメリット② 教員、保育所、学童保育の不足

デメリット①に関連することですが、9月入学の実施により、教員、保育所、学童保育の数が不足します。

これらは、現在の年長世代の学年が1.5倍に増えることや、年中・年少世代の期間短縮によって生じてしまう問題です。

当学年の人数が増えるのは全国で同様に起こるため、教員の絶対数がそもそも足りません。2021年のみ、2万2千人の教員が不足する、という試算が出ています。

また、保育所の待機児童が26万人、学童保育の待機児童が14万人も新たに発生する見込みです。

現在も存在している保育所の待機児童問題に拍車をかけることになってしまいます。

デメリット③ 家庭の費用負担の増加

これは、今年度が延長されることによる費用増加です。2021年の4月~8月も今の学年に在籍することになるので、その間の学校の授業料や給食費などの負担が増加します。

家庭の費用負担増加

負担増加額は次の通り。

▼公立小学校 約13万4千円
▼公立中学校 約20万4千円
▼公立高校 約19万1千円
▼私立高校 約40万4千円
▼国立大学 約39万3千円
▼私立大学 約58万2千円

塾や予備校、その他の習い事にかかる費用も増加します。

デメリット④ 教育現場への負担

現在の学校の運営は全て4月入学を前提に作られています。学校教育法や学習指導要領を元に、授業のカリキュラム、時間割、成績評価、学校行事、教員の研修に至るまで、全ては4月入学前提です。

それらの仕組みを根底から調整する必要があります。

教育現場への負担

今年度はすでに始まっている授業を伸ばしたり、休校で実施できていない分を授業したりすればいいので、今年度は調整できるでしょう。

しかし、来年度が大変です。

学習指導要領の組み直しなど、コロナウイルスが終息するかも分からない中で実施するのは非常に困難だと思います。

デメリット⑤ 社会構造の変革の必要性

最後に書いたこれが、一番困難だと思います。

デメリット④で、学校の仕組みを根底から変えなければならない、と書きましたが、日本の社会構造についても同様のことが言えます。

日本の社会構造は、4月入学を前提に作られています。

そもそも、「学校」というものは何のために存在するのでしょうか?

それは、未来の日本、言い換えれば未来の日本という「社会」を担う人材を育てるためです。

単に、勉強を教えるだけであれば、塾や家庭教師で十分です。実際に、私ども塾は、学校では対応しきれない勉強について子供たちに指導をしています。

しかし、学校の役割は勉強だけではありません。

学校の中で集団生活を送ることで、規範意識、協働性、協力性、感性、主体性、創造性などを学んでいくのです。

ではなぜ、学ぶのか。

それは、よりよい市民になるためです。

つまり、「学校」という組織の出口の先には、日本という「社会」があるのです。

大学や高校、専門学校を卒業後、4月から社会人となって働くのが普通なのです。

もし、学校が9月入学となった場合、学校の出口の先である「社会」も9月スタートが前提となります。日本の多くの企業は、4月に新入社員を迎える前提で動いています。それを変えなければならないのです。

この変革は、教育関連企業だけに留まりません。日本の全ての企業が、国が、県が、市が、9月スタートに仕組みを変えていく必要があるのです。

まとめ

9月入学について、メリット・デメリットをまとめてみました。

9月入学には、休校による遅れを取り戻すことができ、欧米諸国と時期を合わせられる、というメリットがあります。

しかし、未就学児へのしわ寄せや、教員・保育所不足、社会構造の変革の必要性など、非常に大きなデメリットも存在します。

これらのことを慎重かつ迅速に議論し、結果的に現役世代も未来の生徒も頷ける方針になってほしいと思います。

以上トライプラス千葉みなと校の本田でした!

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